プロローグ
横たわる死体を目の前に僕は、ほんの1時間ほど前の自分がした事を、後悔しながら立ち尽くしていた。
しかし、目の前に死体。というまぎれも無い事実。なんとか処理しなければ。やるしか無いのだ。
きっかけは友達に連れられて行った寿司屋だった。回らない寿司。
僕はマグロとかサーモンとかホタテよりもいわゆる光り物が好きで、イワシやシメサバなんかを頼んで、目の前で握られたそれは本当に美味かった。
そういうわけでそれ以来僕の舌と胃袋と脳みその間では魚を食べるのがちょっとしたブームになって、
彼らを満足させるために僕は、イワシをさばいてみようと、SEIYUの店内で思い立ったのだ。
魚の死体じゃんこれ!
というわけで、イワシ。198円だったと思う。
まな板の上に乗せられたそれは、思った以上に死んだ魚だった。
だって牛や豚や鶏と違って、生きてる時のまんまなんだもん。
いまからコレに包丁を入れると想像しただけで恐ろしい。こんなもん買わないで、おとなしくサバ缶でも食ってりゃあ良かった。
手順を調べてみると、まず頭を切り落とす。次に腹を切り開いて、内蔵を取り出す。まじかよ。
すうっ。と音を立てるように息を吸い込み、覚悟を決める。頭を切り落とすべく包丁を持ち、胸びれの付け根あたりを目安に刃をあて、持つ手に力を入れる。
徐々に麻痺する気持ち
ゴリッ
と鈍い感触が手に伝わって来るし耳には音も聴こえる。思ったより力は要らなかった。
その瞬間頭をよぎったのは 続きを読む »