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リズムマシンその2 リズムマシンの歴史とアナログとPCM

In リズムマシンの話音楽の話 on 12月 25, 2011 at 2:54 pm

どんな音のリズムマシンが、僕にとって魅力的であるか

ドラムやパーカッションを自動で演奏してくれる機械、リズムマシン(ドラムマシン)。
前回はリズムマシン全体の大まかな魅力について述べたけど、今回はそのリズムマシンが出す音に注目。時代の移り変わりや技術の進歩とともに変わるリズムマシンの音と、僕は特にどんな音に魅力を感じているか。今回は君に聴いてもらう為の音も用意したので是非聴いて欲しい。

アナログとデジタル

まずはリズムマシンをおおざっぱに二つのタイプに分けたいと思う。

ひとつめは、アナログ音源のリズムマシン。いわゆるアナログ・シンセサイザーと同じように電気回路によって音を出し、それを加工してドラムっぽい音を作ってあって、それを鳴らすリズムマシン。
リズムマシンの代名詞と言っても良いRolandのTR-808はアナログ音源で、当然本物のドラムにはほど遠い音なんだけど、その質感が当時のテクノポップ等の人達に受けて積極的に利用されていた(現在でもかなりの人気がある。それだけ独特の音色と、優れた機能を持ったリズムマシンなんだろう。僕は持ってないので詳しい事はわからないけど。)。
ちなみに僕がはじめて手に入れたリズムマシンであるBOSSのDR-110も、アナログ音源のリズムマシンだった。音も見た目もかわいくて、はじめてのリズムマシンにはぴったりだと思うのであなたも是非。

もうひとつは、上にはわかりやすいかと思ってデジタルと書いたけど、PCM音源なんて呼ばれる事が多い。このPCM音源というのはどういう事かというと、本物のドラムの音を使っている
本物のドラムの音を録音して、それを再生するタイプのリズムマシンなのだ(PCMはPulse Code Modulationの略で、つまりは音声をデータとして保存して再生する技術の事みたい。)。電子音をドラムの音に似せるより、はるかに本物に近い音が出せる。

時代の流れとしてはまずアナログ音源のリズムマシンが作られて、そこから技術の発達とともによりリアルな音を求めてPCM音源に移行していった感じ。
ちなみにその移行期に作られたRolandのTR-909(ダンスミュージックとかでよく使われてる人気のマシンだ。)はバスドラムやスネア、タムはアナログで、ハイハットやシンバルはPCMというハイブリッドマシンなんだって。おもしろいね。

本物じゃないから良いのだ

このPCM音源のリズムマシンというのは本物の音を録音して使ってるわけで、理屈で言えば本物と同じ音が出せるはずなんだけど、初期のPCM音源のころは録音されたデータを保存するメモリーが高価だった事もあって録音できる時間も短いし、音質的にも劣化してしまっている。
だけどそれが独特の質感を出していて、実は僕はその「初期のPCM音源のリズムマシン」が一番好きなのだ。
百聞は一見にしかず、もとい百読は一聴にしかずという感じで、ここで君に実際にそれぞれの音を聴いてもらいたい。その為にsoundcloudのアカウントまで作ったのだから。

聴いてみよう!聴けばこの文章全部読まなくてもわかるはずだ!

僕の所有しているリズムマシンの中から、作られた時代の違ういくつかのマシンを選んで全く同じフレーズを演奏させてみたもの。

    
まず最初に聞こえるのがBOSSのDr−110(1983年)。アナログ音源だ。実物のドラムの音とはかけ離れていることが分かると思う。

次からはPCM音源。最初はYAMAHAのRX-21(1985年)。

その次はCASIOのRZ-1(1986年)。YMOの高橋幸宏が叩いたドラムの音を録音して使っていることで有名だ。

そしてRolandのTR-626(1987年)。前述のとおりリズムマシンの歴史を作ってきた「TR-」の名が付けられた一番最後のマシン。

その後に比較用として、僕のパソコンに入っているgaragebandというソフトの内蔵音源のドラム打ち込んだものをいれといた。

それぞれのリズムマシンが個性的な音を持っている事がわかっただろうか。RX-21からTR-626まではどれも初期PCM音源と呼べる類のもので、こういう粗い感じの音が僕は好き。
どれだけリアルにしても「本物っぽさ」では本物にかなわないわけで、リズムマシンに求めるべきは「本物っぽさ」でなくて、こういう独特の音とグルーヴ感であると僕は思うのだ。
いくらでも本物そっくりの音が作れる現代においてもこの時代のリズムマシンを使うミュージシャンが多く居る事がその証明と言えるだろう。

ところで一番上の絵(というか字?)は、一番上がアナログ音源、その下が初期PCM音源、その下が本物のドラムの音をイメージした模式図なんだけど、どうだろうか。僕のイメージでは、ああいう感じ。

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